成功している社長の数字の見方

勝ち組社長になるための決算書の取り扱い説明書です。

純資産の部

貸借対照表の右下に『純資産の部』というのがあります。

 


損益計算書の項目も含めて、一番分かりにくいところですが、会社経営の上では純資産の部の理解はとても重要になります。

 

純資産の部について理解が深まると、会社の状況をよりリアリティを持って感じることが出来るようになります。

 

早速、純資産の部を見ていきましょう!

 

★純資産の部の構成について
純資産の部は、次のような内訳になっています。

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 多く会社の純資産の部はこの資本金と繰越利益剰余金で構成されています。

資本金     ⇒ 社長が会社を始めるにあたって用意(出資)したお金の金額

繰越利益剰余金 ⇒ 会社がこれまでに獲得した黒字額と赤字額の和

 

資本金は社長が会社を始める時につぎ込んだ自腹のお金の金額ということになります。
繰越利益剰余金は会社が動き始めてから会社が稼いだお金の額ということになります。

 

★資本金と繰越利益剰余金の共通事項

資本金は経営者がつぎ込んだお金です。つまり、経営者が所得税社会保険料等を負担した後の手取りをつぎ込んでいるという事です。会社的にいうと、税引後利益のようなものになります。

 

繰越利益剰余金も、損益計算書上の税引後利益の蓄積になるので、こちらも税金負担を行った後の正味の手残りということになります。

 

共通するのは、いずれも税金負担後の利益をつぎ込んでいるということです。

 

 

★繰越利益剰余金について数字でイメージしてみる

繰越利益剰余金について具体的な数字で説明すると次のようになります。

第1期:税引後利益 1000  繰越利益剰余金 1000

第2期:税引後利益 1800  繰越利益剰余金 2800

第3期:税引後利益 △500  繰越利益剰余金 2300

第4期:税引後利益  700  繰越利益剰余金 3000

 

4期累計:税引後利益 3000 繰越利益剰余金 3000

 

繰越利益剰余金は、税引後利益と連動していることが分かりますね。
黒字になれば繰越利益剰余金は増え、赤字になれば繰越利益剰余金は減ります。
設立から現在までの黒字と赤字を合算したものが繰越利益剰余金となります。
従って、繰越利益剰余金を設立年数で除するとその会社の平均的な収益力がわかります。

 

損益計算書に表れる成績は1年ごとにリセットされてしまいますが、その痕跡は貸借対照表の純資産の部に残ることになります。

 

中小企業においては、追加の出資はあまり一般的ではないので、純資産の部の増減要因はこの繰越利益剰余金、すなわち毎期毎期の黒字・赤字によるものとなります。

 

 

★負債(借入金)と純資産(繰越利益剰余金)の特徴を理解する

負債の特徴は、当社の成績等は関係なしに、契約に基づいてどんどん減少していきます。時間の経過とともに目減りしていきます。この目減り分を戻そうと思うと新たに融資の契約をしなければなりません。ただ、いつも自社の条件の通り融資が実行されるかどうか不確実であるという点があります。もしかしたら、目減りしたままかもしれません。他力の要素が多分にあります。

 

その点、純資産の部は、当社が赤字にさえならなければ目減りすることはありません。つまり一方的に目減りしていくということがないのです。しかも、黒字になれば純資産は増えます。誰かに返せと言われることはありません。自力でなんとでもなります。

 

 

これで、なんとなく負債の部と純資産の部のそれぞれの特徴と共通項がご理解いただけたらと思います。

 

詳しい内容は、別のブログで負債と純資産の関係を取り上げたいとおもいます。

 

 

★経営の安定には純資産の部の充実が不可避

負債は、半強制的に減っていき、その減った分の補填も受けられるかどうか不透明であることは、先ほど書いた通りです。

 

この様に考えると、負債に頼った経営が非常に不安定であることがお分かりいただけると思います。

 

今は、元本返済の猶予など負債が目減りしていかないような交渉を金融機関と行うことができますが、その様な交渉が難しい時代もありました。貸し剥がし等は、今の返済猶予とは反対の動きで、元本を引き上げられてしまうということをいいます。

 

これでは、事業の縮小を余儀なくされるか、あるいは最悪は事業停止に追い込まれることになります。生殺与奪の権を握られている状態にあるということになります。

 

不安定な経営状態から抜け出すためには、純資産の部の充実しかありません。毎期確実に利益を出し、純資産の部を厚くしていくのです。

 

その事業年度の業績がいいと、節税という大義名分のもと無駄な支出を増やす会社があります。それでいて、借金が減らない、資金繰りが苦しいという経営者がいます。負債と純資産は補完関係です。

 

純資産が増えないのに、借金が減るわけないのです。借金から解放されたい、資金繰りをよくしたい等、安定した経営を望む場合には、純資産の充実、すなわち、税引後利益の最大化に毎期挑戦することが大切となってきます。

 

★経営の拡大にも純資産の部の充実は不可避 

売上を伸ばしたい、会社を大きくしたいという場合も純資産の部の充実は不可避です。

 

その前に、一つ大切なポイントがあります。
『売上の規模と資産の規模は比例する』ということです。
ある意味当たり前のことですが、意外と見落としがちです。

 

資産が100億円もある会社の年商が1億円だったら、何やってんだ?となりますよね。反対に資産が1億円しかなくて、年商が100億円という会社はほとんどありません。

 

図にすると次のような感じになります。

 

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このように考えると、売上を伸ばす=資産を増やすというこになります。ラーメン店を例に考えると分かりやすいと思います。屋台のラーメン店は、小さく始められますが売上にも自ずと限界があります。一方、店舗を何店も持ったラーメン店は、店舗設備など大きな資産が必要となりますが、その代わり売上も大きくなります。

 

優劣ではなく自社の方向性がどこを向いているか?ということになりますが、拡大路線という方向性を向いているのであれば、資産の部の拡大は避けられません。

 

こうなったときに問題となってくるのが、どうやって資産の部を拡大させるか?ということになります。下のイメージ図をご覧ください。

 

 

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左側の会社は、会社の純資産(過去の利益の蓄積)で資産を調達しています。一方、右側の会社は金融機関からの借入によって資産を調達しています。

 

同じ規模の会社ですが、余裕度が全然違うことが分かると思います。左側の会社は、ほとんど借金がない状況です。その気になれば、今の純資産と同じくらいの借入を新たに起こすことが可能です。ということは、潜在的には売上を2倍に増やすことができるチカラを持っているということも意味します。仮に、新規取り組みが失敗しても、借金で足元をすくわれることもなさそうです。

 

右側の会社どうでしょう。ほとんど借金です。現状では、更なる借入は難しい状況と言えます。ということは、潜在的には今すぐ売上を増やせるような体制にはないということになります。むしろ、その借金の多さに資金繰り等に奔走しなければいけないかもしれません。

 

一見、売上規模が同じで競っている2社ですが、財政的な余裕度が全然違うため、2~3年後には、片方は売上が倍に、もう片方は瀕死の状態にということもあり得ます。

 

 

★まとめ

いかがでしたでしょうか?
純資産の部の充実は、安定経営の視点でも、事業拡大の視点でも非常に大切なポイントであることがお分かりいただけたと思います。

 

純資産の部が過去の税引後利益で構成されているという点から言えることは、会社経営は税引後利益最大化を考えて行動するべきだということです。

 

もし節税を行うのであれば、正しい節税を行うようにしてください。有効な節税より先に、無駄な節税が実施されていることが多い様に思いますのでお気をつけください。