もう一つの年間売上。
毎月、毎月月次決算を行っていても、1年間の成績が分かるのは最終月を終えてみないと分かりません。
試算表は月次段階で会社の状況を確認するのに最もポピュラーな書類です。しかし、試算表で日常的に把握できるのは、月次売上の推移と該当月までの累計売上になります。
期首から現在までの累計売上で対前期比較を行う事で、前年の同じ期間の比較を行うことができるため、売上がどう変化したのかを捉えることが出来ます。
直感的に分かりやすい書類であり、比較方法でありますが、弱点もあります。
4月はじまりの会社があったとします。
4月や5月など事業年度開始早々はデータが多くありません。4月に突発的な事項があれば、対前年比は大きく変動します。これだと長期的な傾向、趨勢がつかみにくいですよね。
12か月分の売上が揃うのは決算が終了した後だというのも弱点です。しかも、翌期さえもすでにスタートしています。情報がリアルタイムに入っていかないのです。
これが、累計売上で前期比較を行っていくことの弱点になります。
この弱点を補ってくれるのが、移動年計表といわれるものです。
これは、とにかく直近12か月の売上を集計して12か月分数値を合算します。
どういうことか?
3月決算の会社の決算上の売上は、4~翌3月の売上を集計します。
これは4~3月の間の12か月分の売上の集合体です。
これを1か月ずつずらしていきます。
・H28.4~H29.3の売上合計
・H28.5~H29.4の売上合計
・H28.6~H29.5の売上合計
・H28.7~H29.6の売上合計
こんな風に一か月ずつ売上の集計対象をずらしていきます。決算期に関係なく、直近12か月の売上を集計していきます。
入れ替わるのは、前年の4月と当年の4月、前年の5月と当年の5月です。従って、前年同月より産売上が伸びていれば、年計表の売上は増えていきます。前年同月より売上が減少していれば、年計表の売上は減っていきます。
前年割れを続けていると年計表は右肩下がりになっていきます。
こんな風に年計表を使って可視化していくと将来的な業績がどの方向に行くのかが予測されます。
月次売上を並べても会社の趨勢は分かりますが、年間でどう推移しているかを見るのとはインパクトが違ってきます。
年計表が右肩下がりだと、危機感が生まれます。決算を待って、前期と当期の決算書を比較してもそこに連続性がありません。『まぁ、数字の悪い年もあるよね。』で終わるかもしれません。
実際、決算時の比較だけだと、来年また頑張ります。という声をよく聞きます。割と楽観的に捉えるというか、なんとかなるさと考える経営者が多い気がします。
でも、毎月連続して集計された年計表がじわじわ下がっていると、悪い年もあるよね。というの楽観的な考えができなくなります。やばい・・・このままだとジリ貧だな。なんとかしなきゃ。という感覚になってきます。
経営者の緊張感が高まれば、対策を打つようになります。これが、会社が大けがをしないために大切なことです。会社の業績は経営者次第です。どんなに現場が頑張っても、経営者がゆるいと右下がり傾向に歯止めが効きません。
反対に経営者の意識が変わると、会社・従業員が変わっていきます。
移動年計表は簡単に誰でもできます!
月次の売上高を数年分エクセルに並べて、その横に直近12か月分の売上を集計するだけです。ただ過去の売上データをエクセルに入れるだけなので、隙間時間に従業員に頼んでみてはいかがでしょうか。それをグラフにすれば、なお売上の増減傾向が分かります。
売上という最も分かりやすい財務データを使うため、従業員と危機感を共有するのにも利用できます。
時間もそんなにかからないと思いますので、是非一度お試しいただければと思います!