成功している社長の数字の見方

勝ち組社長になるための決算書の取り扱い説明書です。

借入金の正体にせまる!

負債は、買掛金、支払手形、未払金、借入金の総称ですが、負債と言えば借入金のイメージがあると思います。
ブログの中でも、負債と表現しているときはほとんど借入金とイコールの意味で書いています。

 

さて、その借入金について今日は書いてみたいと思います。

 

借入金の正体とでもいいましょうか、借入金が何であるかということが意外と腹に落ちていない、むしろ、腹に落ちていないことすら気が付いていない場合が多いようです。

 

借入金のことを理解して意思決定を行う場合とそうでない場合では、その後の事業展開に大きな影響が出てきます。

 

是非、一緒に整理していきたいと思います。

 

 

 

★借入金の返済パターンについて

★一括返済に適しているもの

★分割返済に適しているもの

★返さなくてもいい借入金がある

★借入金と純資産の関係について

 

以上の内容で進めていきたいと思います。

 

★借入金の返済パターンについて

借入金には、基本的に2つの返済パターンがあります。

①一括返済の借入金

②分割返済の借入金

 

一括返済の借入金は、約束した期日に元本をまとめて返済するという借入金です。例えば、1年後に一括返済するという借入金の場合は、逆に言えば1年間は返さなくていい借入金ということになります。

 

分割返済の借入金は、3年間の分割で返すという約束をした場合は、元本を36か月かけて少しずつ返していくことになります。少しずつではありますが、借りた瞬間から元本返済が始まる借入金ということになります。

 

特徴を端的に言うと次のようになります。

①一括返済は元本が返済期日まで減らない借入金

②分割返済は元本が徐々にではあるが即減っていく借入金

 

えぇ~、なんか一回に支払うのは大変だからちょっとずつでも返し始めた方がいいなぁと思われるかもしれません、一定期間返さなくていいのならそっちがいいと思われるかもしれません。一括と分割のどちらがいいかは、ケースバイケースです。資金を借りた理由・目的によってどちらが良いか変わってきます。

 

これを理解しないで借入をしていると、会社経営が苦しいものになります。

 

 

★一括返済に適しているもの

例えば、仕入資金です。
マンションの販売をイメージすると分かりやすいです。

材料を購入してきて、給料を払ってマンションを建築します。そして販売します。お金が先に出ていって、後からお金が入ってきます。事業者としては、先にお金が必要になります。例えば、建設期間が3か月かかるのであれば、この間の資金を借りて、3か月後に販売したお金で返済する。

 

こういう資金で、分割返済だと大変ですよね。どう頑張っても、売れるのは3か月後なのに、3分の1ずつ返してねと言われても困ってしまいます。

 

もう一つ、洋服屋さんをイメージしてみましょう。

洋服屋さんは、春夏秋冬と4回商品が入れ替わりますよね。冬物なら、秋口にどかっと仕入れて、冬のシーズンに備えます。お金が出ていくのは秋、お金が入ってくるのは冬。ここでも、出金の方が早くて、入金が遅くなります。

 

これも分割返済には不向きですよね。

 

 

★分割返済に適しているもの

分割返済に適している借入金は、設備導入ための借入です。

例えば、機械を購入して製品を作って販売している場合における、機械購入資金です。機械は一度導入すると何年も使用することが出来ます。

 

10年使える1億円の機械を購入したとします。その会社はこの1億円の機械を使って10年間商売をすることになります。10年にわたって収益を上げることになります。そうなってくると、半年後に一括でと言われても会社は困りますよね。10年後に一括返済と言われると今度は銀行が困ります。

 

10年に渡って収益を上げることが出来るのなら、10年かけて返済してもらう、これだと、銀行も会社も納得のかたちになります。

 

 

 

★返さなくてもいい借入金がある

一括返済の借入金、分割の返済の借入金それぞれの特徴がお分かりいただけたと思います。

 

もう一つ、実は返済をしなくてもいい借入金というのもあります。
『えっ、借金は返さなくてもいいの?』
借りた金は返すな!的な書籍もあったと思いますが、そういう過激なことを言っているのではありません。

 

一括返済の繰り返し = 事実上の元本返済停止

 

この状態が続く借入金が、返さなくてもいい借入金ということになります。

 

一括返済の例で、マンションの販売と洋服の販を取り上げました。
いわゆるゼネコン関係の仕事は、案件ごとに金額も期間もバラバラです。こんなケースでは、案件ごとに借りて、返す。というのが一般的です。

 

でも洋服屋さんだったらどうでしょう?春夏秋冬と年に4回商品の入れ替わりが定期的にありますよね。ということは、春に借りて、夏に返す、また夏に借りて、秋に返す、また秋に借りて、冬に返す、また冬に借りて、春に返す。4回くるくると借入と返済を同じような金額で繰り返すことになりますよね。そうすると、瞬間瞬間は返して借りているのだけど、事実上ずっと借りっぱなしということになります。

 

これが返さなくていい借入金の正体です。
在庫資金のために借りた資金は返さなくていいという事になります。
もちろん、閉店セール等を行って在庫がゼロになった時は、それはもう売ってお金になってるでしょうから、その時には返済することになります。

 

この他に、売掛金受取手形は、会社としては待ちの状態ですよね。入金の。売掛金受取手形を持っていて、回収されるまではただひたすらに指をくわえてみているしかありません。これでは機会損失が発生します。

 

それでは!ということで、売掛金が1か月後に入金されるのであれば、今お金を借りて早く次に向けて動き始めて、1か月後に入金されたらそのお金で返します。という方がいいですよね。そうすれば、会社は1か月何もできないという機会損失が回避でき、商売を早く展開させていくことができます。

 

これも先ほどの洋服と同じで、売掛金分を借りて1か月後に返済した時には、また次の売掛金が発生します。またこの売掛金分を借りて1か月後に同様に返済します。これを繰り返していると、結局ずっと借りているという状態になります。

 

受取手形も同様ですね。

 

そすると、在庫 + 売掛金 + 受取手形 に相当する金額を借りる場合には、一括返済を繰り返している状態になり、ずっと借りっぱなしというかたちになります。

 

一方で、自身も買掛金や支払手形という形で相手先に支払を待ってもらっています。そうすると、入金待ちのお金と支払待ちのお金が存在することになります。

 

なので、この支払を待ってもらっている分を差し引いて、正味の待ちの金額分を借りるという事になります。

 

在庫 + 売掛金 + 受取手形 - 買掛金 - 支払手形

 

この計算式で算定される金額が、借りっぱなしにしていてOKな借入となります。
ところが、90年代後半の金融危機以降ある事情で、一括返済型の借入は減り、分割返済型の借入が増えていきました。 銀行と交渉すれば、現在は再び一括返済型の借入にしてもらえるところも増えてきていますので、もし、分割返済型で調達されている会社は交渉し見るといいかもしれませんね!

 

ちょっと最後の買掛金とかが出てきて複雑な話になってしまったでしょうか・・・。
もし、ちょっと複雑だなぁと感じられた方はこの続きをお読みください。
設例を載せました。理解できた方は、読まない方がいいかもしれません・・・。

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会社をたたんだとき、あるいは店舗を締めた時のことを想像して見てください。

 

商売を止めると、在庫も売掛金受取手形も全部現金に変わります。それが最後に残った会社のお金です。

ここでもし、在庫+売掛金受取手形分の借入を起こしていたら、買掛金と支払手形の支払はどうなるでしょうか?支払いが出来ませんよね。

 

具体的な数字を入れてみましょう。

在庫   100

売掛金  500

受取手形 200

閉店時の回収金額は、

現金   800 となります。

 

一方、

買掛金  150

支払手形  50

閉店時の支払金額は、

現金  △200 となります。

 

そうすると、もし、ここで借入金を800していたら、買掛先か銀行のいずれかに対して支払いが出来ないという事態になります。

 

なので、入金待ちの金額と支払待ちの金額を差し引きした正味の入金待ち金額が銀行から借りることのできる金額ということになります。

 

800(売掛等の入金)-200(買掛先への支払い)=600(残ったのが銀行へ返済) この金額であれば、閉店時に全関係者へ精算することができますよね。

 

銀行へ返済しなくてもいい借入金額の求め方がこの設例でお分かりいただけたら幸いです。

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 ★借入金と純資産の関係

借入金は純資産の代替という一面があります。
これに当てはまる借入金は、利益でもって返さないといけないということです。


どんなに純資産が厚くなっても、売掛金は発生します。むしろ売上が伸びているときは、売掛金や在庫も伸びているはずですから、追加の資金需要が発生します。前セクションに該当するような返さなくていい借入金に該当するようなケースは考慮の外に置いておいてください。これらの返済原資は、回収した売掛金や在庫であり、利益ではありません。

 

借入金が純資産の代替であるというのに、当てはまるのが設備資金の借入金です。設備投資のための借入は、純資産すなわち自腹で購入できなかったために、銀行から資金を調達したという一面があります。

 

飲食店を始める時がイメージしやすいのですが、
飲食店を始めるにあたり、食材、アルコール、食器などの道具類、店舗改装費、店舗保証金などが必要になります。

 

前提

◆当初費用(共通)

食材、アルコール、道具類 ⇒ 500万円

店舗改装費        ⇒ 800万円

店舗保証金        ⇒ 200万円

自身の給料        ⇒ 500万円

◆全部自分のお金で用意したAさん

◆自分のお金を500万円用意したBさん

 

この両者のスタート時点の貸借対照表は次の通りとなります。

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貸借対照表を並べると、その違いが分かりますね。どちらも同じお店をオープンさせます。だから用意するものは同じになり、資産の部は同じ内容になります。その一方で、手持ち資金があったか、なかったかで貸借対照表に右側はガラッと変わります。

 

当然ですが、Aさんはこの後儲かった利益は全部自分のものになります。Bさんはその儲けた利益は返済に充てることなります。しかもBさんは利息を払うので、その分Aさんより利益もすくなくなります。

 

これを同じように貸借対照表で比較してみましょう。

 

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Aさんは、利益150だけ純資産が増加しています。その分、資産が増えるので会社の総資産も増えることになります。(ここでは相手勘定を現金と書きましたが必ずしも利益増加=現金ではありません。現金も含めた、資産の部の勘定科目のいずれかになっていると考えてください。)

 

Bさんは、利息を支払っている分だけ利益は少なりますが、100の利益を得ることができました。そして、借入金を毎年100返済しているので、負債は1000から900へ100減りました。ちょうど、負債が純資産に置き換わっているのがわかります。総資産は1500のまま変化がありません。繰り返しになりますが、総資産は変化しませんが、負債と純資産の構成が変わってくることになります。

 

利益が出ているのに、お金が増えていないことに違和感を感じられる経営者の方は大勢いらっしゃいますが、この貸借対照表からも、利益が出たからと言って借入金等をしているとその返済に充てられてしまうので、現金が増えないということがあります。

 

Aさんの様に、借入金がなくても稼いだ利益が月末や決算のタイミングで必ず現金として残っているとは限りません。例えば、Aさんがこの儲けで車を買っていたとします。そうすると貸借対照表は次のようなかたちになり、利益は出ているんだけどお金はない、ということになります。

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少し話がそれましたが、AさんとBさんの貸借対照表の動きを見ていただくと、借入金が純資産の代替であるという事がお分かりいただけたと思います。

 

こういう話をすると、じゃ自分でお金を貯めるまで商売を始めない方がいいんじゃないかと言われる方がいらっしゃいますが、ちょっと違います。

 

Aさん個人は、給料500と会社の利益150を得ています。

Bさん個人は、給料500と会社の利益100を得ています。

 

もしお金を貯めるまで商売をスタートしないというCさんがいたとしたらどうでしょう?

Cさん個人は、会社が存在していないので、給料も0、会社の利益も当然0ということになります。

 

なので、借金は意味がないとかダメ!ということではありません。むしろ、チャンスだと思ったら、さっさと銀行からお金を調達してきて事業を展開していく方がいいです。まさに時間を買っている、その対価として利息を払っていると思ってみてください。

 

繰り返しになりますが、借入金は、その時点で自分で資金が用意できなかった分を銀行に借入というかたちで代替してもらっている状態です。その代替している状態が終わるまでは、会社が稼いだ利益は借入の返済に吸収されてしまいます。ということをご理解いただけたら嬉しいです。

 

最後になりますが、この理屈からも借入のある会社が赤字決算になるということは、返済に充当しないといけない純資産が増えていないということなります。
くれぐれも、無駄な経費や私的(?)な経費を突っ込んで、赤字にして納税をしなくてすむにしよう等とは考えないでくださいね。納税回避は、自分の首を絞めることになりますよ!