経営の安定度について
多くの経営者が、良い会社というのをイメージすると次のような会社をイメージされます。
★黒字である
★自社ビルだ
★ベンツに乗っている
いかがですか?良い会社の印象を持ちますよね。
黒字かどうかとかは、金額は分からないにしても社長同士の会話で『うちは、今期はなんとか黒字で、』等と意外と情報が耳に入ってきたりします。
自社ビルやベンツに至っては、隠しようがありません。
そうすると、【黒字、自社ビル、ベンツ】が揃うとリッチな会社に見えてきちゃいます。『お隣さんは、余裕があっていいなぁ、うちなんて毎月不安定で・・・』なんて思っちゃたりします。
でも、実際に蓋を開けてみると、
黒字でもしんどい会社はあるし、赤字でも余裕のある会社があります。
自社ビルを持っていても、余裕のない会社もあります。
ベンツに乗っていても、余裕のない会社もあります。
これが、中小企業の実態です。外から見える情報だけでは、その会社の真の姿は分からないと思った方がいいです。
真に余裕のある会社とは、黒字であることでも、自社ビルやベンツを持っていることでもありません。
真に余裕のある会社とは、貸借対照表が綺麗な会社、貸借対照表に余裕のある会社です。
会計事務所や金融機関の人間は、この貸借対照表が綺麗な会社は、実直な社長が経営する会社だなと考えます。
どんなに黒字が出ていても、ベンツを所有していても、貸借対照表がボロボロではその会社に対する信用はイマイチになります。
そういう意味では、貸借対照表は会社の信用そのものです。
どうして、貸借対照表がボロボロだと信用が低いのか?
どうして、貸借対照表が綺麗だと経営に余裕が生まれるのか?
その謎を貸借対照表から紐解いていきましょう!
★ある同業の会社AとBの現在の貸借対照表
会社の規模は同じ1000ですが、A社はそのほとんどを負債で補っています。B社はそのほとんどを純資産(過去からの利益の蓄積)で補っています。
★もし、翌期100の赤字を出したらどうなるか?
赤字=純資産のマイナスです。100の赤字を出した場合には、純資産が100減少することなります。
A社は、ついに会社の運営に必要な資産を全額負債で賄う状況に陥りました。常に返済のプレッシャーと戦うことになります。次年度も赤字になれば【債務超過】になります。
B社も純資産が100減りましたが、まだまだ蓄積はあります。負債にも十分対応できます。
単年度だけを見れば、両社ともマイナスの100で事業年度を終了しています。でも、全然、余裕度・危険度が違うことが分かると思います。
これが儲かった、儲かっていないだけでは計り知れないものになります。言い換えれば、損益計算書からは見えない部分となります。
★更なる借入に耐えられるか?
もし、何らかの資金需要が発生した場合に、追加の借入が可能かという視点でこの貸借対照表をご覧ください。
いかがですか?
A社の貸借対照表は、負債と純資産のバランスが頭でっかちになっています。一方、B社はまだ下半身(純資産)がどっしりしています。
もし、自身が銀行員あるいは投資家であった場合に、A社に200を貸し付けるでしょうか?『こんなに借金を積み上げて、本当に戻ってくるのかよぉ~。どうやったら、この借金が減るのか示してくれよ。』と思いますよね。
『銀行は雨の日に傘を取り上げる』使い古された言葉ですが、A社の様な会社であれば貸す側の気持ちになると、拒絶するのも致し方なしだと思われたはずです。
★まとめ★
中小企業の経営者の皆様には、是非、貸借対照表をどう作っていくかという意識を思考の中に入れていただきたいと思います。
貸借対照表のことをバランスシートと言いますが、まさに貸借対照表の中身をバランスよくキープしていくことが、安定的かつ長期的な経営に繋がります。
安定経営の会社になれるかどうかは、経営者の思考が【PL脳からBS脳】になれるかどうかにかかっています。
収益力がそこまで高くなくても安定した経営をしている中小企業はあります。そんな会社の経営者は、例外なくBS(貸借対照表)を積み上げていくイメージの経営をされています。
反対に、収益力があっても(最終的に納税を嫌って散財するので収益力がるとは言えないのですが・・・)、PL脳の経営者が経営する会社は、いつも資金繰りに追われています。
このブログで、貸借対照表や損益計算書をいろんな角度から見ていきますので、ちょこちょこ覗いてみてもらえればと思います。